みどりの緑陰日記

香港で始めたプレイルームどんぐりから数えて35年、子ども達に絵本や児童書を手渡し続けてきました。絵本や児童書のこと、文庫活動のことなどを綴っています♪ noteも書いています(https://note.com/child_books/)

2022年07月

絵本探究講座第1期(ミッキー絵本ゼミ)第4回受講の報告

7月24日(日)13時〜 @オンライン

ミッキーの絵本探究ゼミの第4回のレポートです。


4月24日に発足したインフィニティアカデミアの絵本探求ゼミも、今回で4回の学びを終えました。残すところは、8月6日〜8日に北海道は層雲峡で行われる合宿を残すのみとなりました。


振り返ると、毎月1回のゼミでしたが、事前課題に取り組み、資料を読み、また終了後に振り返りシートを書くという学びのサイクルで、絵本というものを研究の対象として捉え、分析するという姿勢が身についたのではないかと思います。
(過去3回の受講レポート→こちら


もちろん私自身は、今までも絵本を研究の対象としてきたのですが、出発が大学時代の幼児教育学の中での絵本論、つまり保育教材としての絵本、子どもの育ちを助ける絵本、ことばの発達を促す絵本というような視点での分析だったのです。

つまり研究のアプローチが違う。


学生時代も、ゼミではさまざまな絵本を読み比べ、テキストと絵について分析をしていたのですが、常に子どもの目から見てどうなのか、子どものイマジネーションの広がりとの関係について絵本を捉えてきました。


今回のミッキーの絵本探求ゼミでは、まずは絵本の技法というところにスポットをあて、絵を読み解くという研究方法だったのは、また私自身の絵本理解へのもうひとつの扉を開けてくされたと感じています。


もちろんそういう手法があることは、絵本学会発足時から会員になっているので、学会の論文などを読んで知ってはいました。ミッキーから参考文献として取り上げられた資料もほぼ手元にあって、一応は目を通していました。


しかし、私の中で技法について殊更に取り上げるということよりも、子どもたちが絵本を読んでもらって発見するさまざまなコトやモノというものに注目してきたのです。その延長線上に、子どもの気持ちを捉える効果的な表現や技法があるという捉え方をしてきました。


つまり、技法ありきではなく、その技法もあくまでも子どもがそれをどう受け止めるかということのほうに重点を置いてきたと言えるでしょう。


ただ、今回の学びを通して、絵本作家側の意図、その絵本をどのように子どもたちに届けたいのか、物語なり、テーマとしているものを、伝えていくための工夫としての技法について、より理解を深めることが出来ました。


幼児教育学の中での絵本論というところから学びを出発させている私にとっては、その視点を持ちえたことは、今後の絵本の研究や選書に少なからず影響を及ぼすだろうと思います。


さて、第4回の学びは、そうした絵本の技法を踏まえたうえで、「読書年齢と絵本」についてそれぞれが考え、選書してきて、それがどんな年齢の読者を想定して選んだかを発表し合いました。


チーム1では、5人のうちおひとりは欠席でアーカイブ受講、4人でのブレイクルームでした。

4人はそれぞれ立場が違っています。いさっちは高校の先生、おこちゃんは元学校司書で現在はその経験を生かす図書館ボランティアをしています。えりちゃんは保育園で働く保育士さん、そして私は家庭文庫主宰で幼稚園の保育補助の仕事をしています。


それぞれが想定する子どもの年齢なども違うため、バラエティに富んだ選書になりました。

いさっちは、メンタルに問題を抱えている中高生に向けての選書で、元灘高校の英語の先生がこの6月に出版された『あなたのちからになりたくて』(木村達哉/著 ラグーナ出版 →こちら)を紹介してくださいました。
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おこちゃんは、子どもの成長過程で「自分を認めてもらう」体験が自立につながるという視点で、2,3才〜小学低学年の子どもたちを3つの段階に分けて、それぞれに相応しい絵本を選びました。

まず第一次反抗期の2,3才の頃の子どもたちには、可愛いばかりではなく自我が出来てきて、おとなから見たら扱いづらい時期ではあるけれど、変わらずあなたは大切な存在だというメッセージをこめて『ちびゴリラのちびちび』(ルース・ボーンスタイン/作 いわたみみ/訳 ほるぷ出版 1978 →こちら
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自分で歩きはじめて、次々に周囲にあるものに興味を持つようになった3才頃の子どもたちには『いっぽ、にほ』(シャーロット・ゾロトウ/文 ロジャー・デュボアザン/絵 ほしかわなつこ/訳 童話館出版 2009 →こちら
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4〜5才になって下に弟妹などが出来て、自分で初めてのことに挑戦する子どもたちに向けて、恐怖心を乗り越えて成長する姿と、それを受け止めてくれる親の存在を再確認できる絵本として『はじめてのおつかい』(筒井頼子/文 林明子/絵 福音館書店 1977 →こちら)を選びました。
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そして年長〜小学校低学年の子どもたちに向けては、小さな存在でも社会の中で役立つ、社会の中で価値がある存在だということを伝える絵本として『ちいさなメリーゴーランド』(マーシャ・ブラウン/作 こみやゆう/訳 瑞雲舎 2015 →こちら)を選書しました。
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子どもたちの成長を励ます絵本にも発達に応じていろいろな段階があることを、元学校司書のおこちゃんが見事なブックトークで紹介してくれました。



えりちゃんは、今、ご実家の高齢のお母さまの様子が気になるということで、そのお母さまに向けて絵本を選書しました。第2回の学びで絵本というメディアは、子どもだけが対象ではない、年齢の低い子どもたちにはまだ理解できないという絵本はあるかもしれないけれど、それ以上はどの世代の人も絵本を読む対象になりうると話しあったのですが、まさに今回えりちゃんは、身体が弱ってきているお母さまに向けて選書したのでした。
1冊目は日本の国歌になっている『ちよにやちよに』(白駒妃登美/文 吉澤みか/絵 山本ミッシェール/英訳 文屋 2021)を紹介。日本人であることや古代の愛の詩を読んであげたいという娘心のようです。この本は図書館では詩画集に分類されています。

次に兄と一緒に子ども時代に田舎の川で遊んでいたそんな姿を思い出してほしいということで、田島征三の『とわちゃんとシナイモツゴのトトくん』(田島征三/作 ひだまり舎 2021 →こちら
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そして昔話もきっと好きだろうということで、昨年のオンライン絵本会でも読んだ『かっぱのすりばち』(佐藤修/原作  廣田弘子/再話 藤原あずみ/絵 2009 一声社 →こちら) 
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最後に私の選んだ絵本を紹介しました。ちょうど絵本学会の絵本モニターの原稿の締め切りが7月31日で、テーマが「平和を考える」絵本だったので、同じテーマで年齢を考慮しながら3冊をチョイスしました。

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1冊目
対象年齢4〜5才
『ここがわたしのねるところ』
レベッカ・ボンド/文 サリー・メイバー/作画 まつむらゆりこ/訳 福音館書店 2022
(紹介文)
01-8644_01オランダの子どもたちは屋形船の中で、中南米の国ではハンモックに揺られながら、インドのように暑い国では蚊帳をつったベッドで、アフガニスタンの子どもは敷物の上で、日本では畳の上に布団を敷いてと、世界各地の寝る習慣は違うが、一日の終わりに子どもたちが安らかに眠りにつけるのが何よりの平和の証。それぞれの地域の伝統的なデザインや文様も含めて全場面が精巧なアップリケと緻密な刺繍で描かれ、子守歌のような文章が読むものを安らかな眠りに誘う。
 世界には戦火や災害、貧困で家を無くし、安心して眠る場所を持たない子どもが大勢いる。その子たちに一日も早く安らかな眠りが訪れることを祈らずにいられない。

2冊目
対象年齢 小学校中学年10歳以上
『えほん 北緯36度線』
小林豊/作 ポプラ社 1999
(紹介文)
350_ehon7979大きな鳥が北緯36度線に沿って日本列島を飛び立ち、朝鮮半島、中国大陸のクルルン山脈を抜け、パミール高原、黒海の南を通って地中海を抜けてジブラルタル海峡へ、西へ西へと飛んでいく。
 そこに生きる人々の何気ない生活がいかにかけがえのないものか。
「きっと 大きな鳥は しっているのだ。
にんげんが、じめんに   線をひき、その線を、なんども ひきなおすことを。
その線をこえて 生きることの、よろこびを。」
権力者たちが武力で他人の領土に侵略していくのが戦争。鳥の目で見たら、国境という線は見えない。戦争がいかに愚かなことなのか、私たちは想像しなければならない。


3冊目
対象年齢:小学6年生〜中高生 12歳以上
『絵で読む 広島の原爆』
那須正幹/文 西村繁男/絵 福音館書店 1995
(紹介文)
 01-1265_012021年7月に没した那須正幹さんは東京子ども図書館機関誌「こどもとしょかん」170号(2021夏)に「被爆を体験している世代としては、この絵本が、あの日のことを語り伝えるよすがとなれば望外の喜びである。私にとって、この本は遺書のようなものなのだ。」と書き残された。
 ご自身が3歳で被爆しつつも、広島を離れて一児の父となるまでは原爆を創作の対象にできなかったという那須さんが、子どもにわかる言葉で多角的に広島の原爆を捉えようとされた偉業である。ウクライナ情勢を機に日本も軍備に走ろうとする今、その遺志をしっかりと受け取り、子どもたちに手渡していきたいと強く思う。

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2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始し、早くも5カ月が経過していまいました。この間、図書館などでも「戦争と平和」をテーマにした展示がされたりというのを見聞きしています。書店でもそういうコーナーが出来ています。

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テレビをつけると容易に街が空爆されている映像が流れるため、まだ親子の愛着関係を緊密に保つ必要のある幼児期〜小学校低学年までは、できればそういう映像をシャットダウンしてほしいと思っています。

そして「今こうしてパパやママと一緒に暮らせること」「夜になったら安心してベッドにいけること」「朝までぐっすりと休めること」が、いかにかけがえのないものかを、子どもたちと一緒に味わってほしいと思います。

日常が平安で心安らかに過ごせている子どもたちは、もう少し長じて国と国との緊張関係が崩壊して戦争になることを学んだとしても、戦争がその平穏な日常を容易く壊してしまうのだとわかれば、「戦闘がかっこいい」と短絡的に考えることもないはずなのです。

なので、幼児期の子どもたちには「やすらかな眠り」をテーマにした『ここがわたしのねるところ』を選びました。


小学校中学年になると、日本が地球上のどこに位置しているのかがわかり、地球儀などを使って世界のことも学ぶ機会が増えます。北緯36度の線を地球儀に沿ってずっと西へ西へと指さしていくと、朝鮮半島から中国大陸を横切り、クルルン山脈を越え、アフガニスタンを横切り、黒海の南を通って地中海の西の端、ジブラルタル海峡へと繋がっていることがわかります。

大きな鳥がまっすぐ西へ飛んでいくとしたら、その鳥はどんな景色を見るのだろうか、というまさに鳥の目になって俯瞰して見ることができるような年代、メタ認知が可能になった子どもたちには『えほん 北緯36度線』をお勧めしたいのです。

地球儀には国境線が印刷されていますが、実際の地球上には国境の線は引かれてはいない。ただ権力者がその領土を奪い合い、壁や鉄条網で囲っているだけなのだということを知れば、その略奪の応酬がどれだけ不毛なものなのかを理解できるようになるのではと、期待できるからです。


そして小学校6年生になれば、関西や中国地方の子どもたちは修学旅行で広島や長崎の原爆について学び資料館などを訪れる機会もあると思い、調べ学習にも使える資料としても優れ、絵と文章の力もある那須さんの『絵で読む 広島の原爆』を手渡したいと思います。

科学技術の進歩は素晴らしいけれど、それが一旦殺りく兵器へと応用されてしまうと、一度に大量の人を殺すことができる兵器になってしまうことを、自覚的に知ってほしいと思うのです。

今、ウクライナ情勢を逆手にとって、日本でも軍備拡張、核兵器による抑止力を声高に訴える人が増えています。しかし、現時点では世界の中で唯一の被爆国である日本の子どもたちに核兵器の破壊力と、その殺傷能力、そして生き残った後にも続く放射線被害について、きちんと知っておいてほしいと思うからです。


と、このように一口に「平和を考える」というテーマで、絵本を選ぶとしても、どんな年齢のどんな体験を重ねてきた子どもに手渡すかを、きちんと吟味し、相応しい選書をする必要があると考えます。


とくに、戦争のように子どもの心をいたずらに不安にさせかねないテーマの場合は、より慎重な選書が必要になってきます。


そのためにも、子どもの心理やことばの発達についてきちんと学び、その対象年齢に相応しい絵本とはどういうものなのかを常に考えられる知識を身につけることがとても大切だと、改めて思いました。



各チームの発表でも、多くの方が普段から司書として、あるいはボランティアとして、子どもたちに本を手渡す活動をされているので、きちんと子どもの発達に合わせて選書されていました。



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さて、次回の絵本ゼミは合宿の中で各チームの発表になります。

私たちのチームは、5人が置かれている立場が違っているので(今回欠席だったいおりさんはプロのアナウンサーで朗読指導者)、それぞれがミッキーの絵本探究ゼミで学んだことをどのように生かすのかを、インタビュー形式で表明できるように準備しています。


リアル合宿で学んだことも、またリフレクション出来ればと思っています。



銀座教文館ナルニア国で降矢ななさんの講演会

7月12日(火)18:00〜 @銀座・教文館ナルニア国


足立区中央図書館での読み語り入門講座の間は雨が降っていなかったのですが・・・帰宅するころには雨脚が強くなってきました。一旦、帰宅して休憩をしたのち、夕方に降矢ななさんの講演会に参加するために出かけました。


292786231_5303423886406505_865044554169787806_n夕方、銀座に向かう頃もまだ雨が降っていて駅まで自転車では行けなくて、バスで・・・でも降矢さんのおはなしをリアルで聞けるのが楽しみで、心は軽くワクワクしながら出かけました。






降矢ななさんの教文館ナルニア国での講演は、2020年2月9日(日)に行われた「松岡享子さん、降矢ななさん対談」(その時のブログ記事→こちら以来で、実に2年5か月ぶりです。


その年の2月29日から今は無くなってしまった教文館ウェンライトホールで「降矢なな絵本原画展」が始まることになっていて、それに先立って松岡享子先生と一緒に降矢ななさんとがお話しくださるという、すごく贅沢な時間だったのです。


ちょうど降矢ななさんが挿絵を描かれた松岡享子さんの幼年童話『あたまをつかった小さなおばあさん』の続編が出たところで、原画展会場に松岡享子さん手作りの「小さなおばあさん」人形が飾られていたのですが、それをプレゼントされたお話などを伺ったのでした。


日本では横浜に係留されたダイヤモンドプリンセス号の中で広がった新型コロナウイルス感染症で死者も出ていると報道が出て、未知のウイルスに対して多くの人が危機感を感じていた頃でした。


降矢さんは、この対談が終わった後、お住まいのスロヴァキアに帰国されたのですが、ちょうどヨーロッパでも感染拡大が広がり、ロックダウンされる前のギリギリだったということです。
そんなお話から、今回のおはなしが始まりました。

というのも、その時の対談が松岡享子さんの最後の絵本となった『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』を作るきっかけになったからだというのです。

01-8658_01『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』
松岡享子/原案・文 降矢なな/絵 福音館書店 2022/4/10(出版社サイト→こちら









2020年2月9日の対談が終わったあと、降矢さんは松岡享子さんと、その養女のえみさんとお茶をご一緒され、その時に、パン作りや小麦粉アレルギーの話題が出て、えみさんと親しくなりその後個人的なやりとりようになったそうです。


翌年、3月に降矢ななさんがチェコの昔話『ヴォドニークの水の館』(まきのあつこ/文 降矢なな/文 BL出版 2021/3/10)を出版されました。
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その春、2020年4月に緊急事態宣言が出て中止になっていた降矢なな絵本原画展が再開され、絵本原画展の中で『ヴォドニークの水の館』の原画も展示されました。






その期間中の2021年5月1日(土)の18:00から、”教文館ナルニア国降矢なな展記念 降矢ななさん×鈴木加奈子さん(編集者)オンライン対談“ことばが、絵になり、動きだす――チェコの昔話『ヴォドニークの水の館』を中心に、絵本のこと色々。”が開催されました。

私はこの時、ナルニア国のオンラインイベントのサポーターとしてZOOMの共同ホストをさせていただいていました。(そのことが書いてあるブログ記事→こちら


実はこのオンラインイベントに、教文館ナルニア国から松岡さんにご案内を出していて、参加してくださる予定になっていました。

517DCGP9NNL._SX218_BO1,204,203,200_QL40_ML2_松岡享子さんはその著書『昔話絵本を考える』(エディタースクール/刊 2002)の中で、口述で伝承されてきた昔話を絵本にすることに懐疑的な意見を書いていらっしゃるので、どんなふうに『ヴォドニークの水の館』を受け止められるか、降矢さんがドキドキしていたところ、松岡さんが腰を痛めて参加できなくなったと連絡があり、結局その日はご参加いただけませんでした。

(オンラインサポートをしている時に入った情報では、たしか、音だけ聞いているという連絡だったと記憶しています)



ただ、それがきっかけとなって、松岡えみさんと頻繁なやりとりが始まったそうです。



そんなやりとりの中で、松岡先生が「休んでいる間に思いついたことがあるのよ。こういうのを転んでもタダで起きないってことかしら?」とおっしゃったのが、『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』の原案。


2021年8月末になって松岡先生に病が見つかります。


東京子ども図書館機関誌「こどもとしょかん」2021年秋171号に、差し込みで「賛助会員、購読会員のみなさまへ――ランプシェード休載にあたり」というお手紙が入っていたのですが、それによると前号の「ランプシェード」(松岡さんのエッセーコーナー)に室内で転倒して腰椎の圧迫骨折したと記されていたのですが、その入院中の精密検査でかなり大きな脳腫瘍があるのがみつかったと書かれています。

その手紙には「わたしは熟慮の末、治療はいっさい受けず、万事成りゆきにまかせることに決めました。この決定は賢明だったようで、わたしはその後、手術や、治療や、それにともなう副作用などに妨げられることなく、じつに静かで穏やかな時間をたっぷりとあたえられました。」と書かれていました。


ちょうどその頃、松岡先生はえみさんを通して、降矢ななさんに新しいおはなしの構想を伝え、ななさんはその働きかけに応えて一生懸命絵を描いていらしたことが今回の講演でわかりました。


降矢さんは、松岡さんの病気のことを知って時間がないと思い、福音館書店の編集者宇田さんと四つ巴で絵本製作に取り掛かります。


松岡さんのお話の原案ははじめとおわりだけで、「思いついたのはななさんから聞いたスロヴァキアの生活の話が面白いから、ななさんとお連れ合いのぺテルがおばあさんとおじいさんになった時、こんな面白い会話をしているって、そんなものを作って!」という漠然としたものだったそうです。


何度かえみさん経由でやりとりをしているうちに、松岡さんがイメージしている「えんどうまめばあさんは何かをやり始めると、すぐに他のことに気を取られて、やりかけで次のことを始めてしまう」という特性は、お連れ合いのぺテルにそっくり!夫婦のおはなしにしましょう、ということになり、降矢さんが途中のおはなしを作って絵本案を送ると、「エピソードが多すぎるから整理したら」と松岡さんの感想が届き・・・


そんなやりとりをしながら、アイデアスケッチを描き、届けたそうです。

その内、松岡さんの音声メモで返事が届くようになり、そこにはおはなしを読んでコロコロと笑う声が遺されているそうです。


降矢さんの中で時間がないことだけはわかっていたので、とにかくどんどん描いてデータ送信すると、えみさんが出力して松岡さんが見る

そうやって送信するとすぐに反応が来るという中で、修正して描き直し、また送る・・・その繰り返しだったそうです。2022年3月12日の松岡さんの誕生日に出版が間に合うようにと・・・降矢さんはこの作品に集中されたそうです。


いよいよ完成に近づいたころ、松岡さんが「ねことかいぬとかが出てきたらいいよね」とひとこと。

降矢さんは愛猫を亡くしたばかりで、猫を描くのにまだ心が整ってなかったけれど、松岡さんのことばに応えてねこといぬを描き足したそうです。


完成してみると描いてよかったそうです。ベッドの上で丸くなっているねこの姿は、まさに降矢さんが飼っていたポニョなんだそうです。


そうやってやりとりをして、いよいよ完成原稿を出力し、DHLで日本に発送した後で、表紙絵がしっくりこないという最後のダメ出しが!松岡さんの想いに応えてななさんは表紙絵も描き直したそうです。


4カ月ほどの短い時間で絵本を仕上げるという異例の速度での仕事だったけれど、振りかえると豆のつるのようにスルスルスルスルと絵本が出来ていったとななさんは仰っていました。


簡易製本の見本を受け取って、松岡さんはとても喜んでくださったそうです。ただ、3月のお誕生日を待たず1月25日に天国へと旅立っていかれました。



今年4月に教文館ナルニア国で、『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』の原画展が開催されました。その際に子どもたちが、感想ノートにえんどうまめばあさんとそらまめじいさんの似顔絵を描いてくれていて、子どもが真似して描ける主人公って嬉しい!ありかも!と思ったそうです。


ここまでが、『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』制作秘話でした。


後半は、スロヴァキアの隣国、ウクライナへのロシア侵攻のこと、そしてスロバキアでもウクライナ難民を受け入れる中で、ななさんのご家族もウクライナからの難民母子を受け入れた体験を語ってくださいました。


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そのあたりのことは『鬼が島通信』2022年spring70+8号に、16ページのコマ割り漫画にして掲載されています。





また、この度のロシアの武力によるウクライナ侵攻は絶対に許せることではないけれど、ウクライナ情勢を理解するためには、日本のメディアがウクライナ+NATOが善で、ロシアが悪という単純な色分けではなく、複雑な歴史的な背景を知る必要があるとして、一冊の本を紹介してくださいました。


それが『中学生から知りたい  ウクライナのこと』小山哲・藤原辰史/著 ミシマ社 2022/6/10 (出版社サイト→こちら
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ウクライナという国が、9世紀キエフ⁼ルーシという国から歴史を紐解くことを始めるとして、分裂や侵略が繰り返され、モンゴル軍に制圧されたり、リトアニア大国の一部になったり、ポーランドに併合されたり、ロシアに併合されたりと、広大な国の西と東でも別々の歴史があり、その間にいろいろな宗教が入り、いろいろな民族が交錯し・・・と

島国である日本からは想像が出来ないほどに、この1000年ほどの間でも国の形がどんどん変化しているのです。



いつの時点で「ウクライナ」という国を規定するのかによっても違ってくるし、NATOがロシア侵攻を一方的に責めるけれど、実はNATOもユーゴスラヴィアのセルビア系住民に対する空爆をしていくことなど、自分たちのことを棚にあげての非難だけでは、和平交渉もうまくいかないことなどが書いてあるのです。

著者は歴史学者です。そして「中学生から知りたい:とある通り、とても読みやすく情報を整理してくれています。


降矢さんは隣国スロヴァキアに住んでいて、そういう矛盾にも気づいていらっしゃるようでした。そしてヨーロッパでさえも、軍事侵攻から数カ月が経ち、支援疲れが始まっていることに懸念されていました。


悲惨な戦争は簡単に始められるけれど、それを止めるためにはその何倍もの英知が必要で、そのためには世界が関心を持ち続けること、自分事にしていくことしか道はないのですよね・・・そんなことを降矢さんの後半のお話を聞いていて思いました。


JBBYでも降矢ななさんの講演会をオンラインで実施したので、この2年5カ月の間にもオンラインでは降矢さんと対面し、お話も伺ってきましたが、やはりリアルでお話を伺えるというのは、その方の息づかいや身振り手振りが直に伝わり、心の襞にまでその想いが伝わってくるなあと感じました。


リアル講演会、ありがとうございました。

この日の講演はビデオ撮影されて、後日オンライン配信される予定でしたが、機材の調子が悪かったのか(そういえばマイクの音が時々途切れていました)、配信が中止になり、ななさんがスロヴァキアに帰国された後で、オンラインでもう一度やるとのこと。


ってことは私、ネタバレしちゃってるかしら。きっと文字で読むのとは違って、オンラインででも耳から聴くのとでは違うと思うので、オンライン開催を楽しみにしてくださいね。


足立区中央図書館での読み語り入門講座を担当

7月5日(火)10時〜12時、12日(火)10時〜12時 @足立区中央図書館


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2018年から継続してご依頼をいただいている足立区中央図書館でのボランティア向け講座の講師の仕事、今年もご依頼をいただき、7月5日と12日の2回、「読み語り入門講座」を実施してきました。

*ちなみに足立区では「読み聞かせ」のことを「読み語り」と表現しています。







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今年は、仕事を辞めて個人として(家庭文庫主宰者、JBBY理事という肩書で)ご依頼を受け、より背中が伸びる想いでお引き受けしました。









295892586_5344731062275787_4761817081076377774_n今年の「読み語り入門講座」は、ボランティア活動を始めたい人に加えて初めての子育てをしている若いご両親にも参加してもらえる講座にしたいというご要望だったこともあり、子連れ参加OKにしました。




果たしてその狙い通りに、赤ちゃん連れの方が4組もいらしたことと、子育て中のお父さんも2人いらして、熱心に聞いてくださったことがすごく印象的でした。


一日目は、まずは松岡享子さんの『子どもと本』「第二章 子どもと本との出会いを助ける」からの引用をしながら、今年亡くなられた松岡享子さんの想いを伝えることから始めました。




その後、『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』から、現代の子どもたちの置かれている状況と共に、デジタル時代だからこそ、小学校低学年までの紙の本での読書、とりわけ「耳から聴く読書」の重要性をお伝えしました。


その後、「子どもの読書と発達」0歳から中高生までの発達の特徴を概観し、その時々にどんな本を手渡すのがよいのかをお話しました。


一日目はここまで・・・


終了後に熱心なお父さん、お母さんから質問が寄せられ、それにもひとつひとつ丁寧にお答えしました。

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翌週は、集団への読み語りを前提とした「選書」について詳しくお話しました。それぞれの年代ごとにお勧めの絵本を用意して、実際に手に取ってブックトークしながら、その特徴を話していきました。




そしておはなし会のプログラムの立て方、絵本の持ち方、読み方までを丁寧に。

ただし、それはあくまでも不特定多数のお子さん対象に読む場合のコツとしてお話しました。読み語りに「こうでなければばらない」という型はないのです。

大勢の子どもたちが同時に絵本を楽しめるようにという工夫であって、そうでなければならないというものではないというところを強調しました。

その後で、集団への読み語りではなく、ご自宅でお子さんと楽しむ方法も別途お伝えしました。やっぱり絵本はもともとパーソナルなもので、おひざの上で、あるいは隣同士に座って同じ目線で楽しむものなんです。

親子のコミュニケーションとして絵本を読んであげる時間が大事なのであって、家庭ではどんな読み方でもいい。それぞれの家庭のスタイルがあることを、子育て中の方にはお伝えしました。





参加者の方々が終了後に借りていけるように、図書館のほうで複本をご用意いただきみなさんも手に取って確認してくださっていました。



「1回目の講座で紹介してもらった松岡享子さんの『子どもと絵本』を購入して早速読んでいます」と言ってくださった方や、「『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』も借りて読みました。子どもが小学生になるまで絵本を読んであげたい」っていう方や、1回目が終わってからお勧めの絵本のリストから借りていってお子さんに読んであげた〜といって写メを見せてくださる方も!




2回の講座を通して、少しでも「子どもたちに絵本を読んであげよう」という保護者の方やボランティアの方のお役に立てたのなら嬉しいなと思いました。

奥飛騨・あぶらむの里へ

7月2日(土)〜3日(日)

7月2日は午前中は文庫をオープンし、児童図書館研究会東京支部の4名の方々が視察に来てくださいました。文庫利用の子どもたちは登校日と重なってしまったみたいで、利用がなく残念!


午後、東京駅へ移動し14時24分発はくたか567号で富山へ・・・富山からは高山本線に乗り換えて特急ひだ20号で飛騨古川へ向かいました。


一緒に飛騨高山にあるあぶらむの里の見学をしないかと、食といのちの学び舎GAIA代表のゆうゆうに声をかけられたのが、約1週間前の6月26日のこと。次の体験支援の場のひとつの候補地として視察に行こうということでした。

1回目の支援は、北海道佐々木ファームをその場としていました。その後、佐々木ファームと並ぶ、いのちの体験の場としてふさわしい場所を探していて、ここが一つの候補として名前があがったのです。

1回目のプロジェクトの様子→こちら

GAIAの仲間たちは朝早く名古屋集合してそこからレンタカーで高山に入ることになっていました。


急遽、文庫開催を午前中だけにし、午後出発することにしたのですが、当初予定していた東海道新幹線で名古屋まで行って、そこから高山本線で北上するルートだと、現地に夕食前に到着できないことがわかったのですが、北陸新幹線で富山経由だと間に合うことがわかり、こちらのルートで向かいました。


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北陸新幹線は糸魚川までしか行ったことがなかったので、その先は初。
糸魚川を過ぎたあたり、日本海がきれいに見えていました。




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富山駅の新幹線乗り換えも、一旦改札の外へ出ないと在来線に乗り換えられず、初めての体験にドキドキしてしまいました〜富山駅のコンコース内に掲げられていたタペストリーが素敵でした!




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高山本線は3番線の奥のほうにあって、わかりにくい〜

そして特急なんだけど3両編成という短い編成でした。







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富山市内を抜けると、どんどん山間に入っていきます。
線路の下に神通川が見え隠れしていました。



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「あぶらむの里」は飛騨高山市内にあると聞いていたので、特急券は高山まで購入していたのですが、途中でゆうゆうからメッセージが来て、ひとつ手前の「飛騨古川」の駅が最寄とのこと。
こちらに車を回しているから、そこで降りて〜!と。






メッセージ、ちゃんと受け取れていてよかった!



飛騨古川ではゆうゆうと、もうひとりのGAIAのメンバーNちゃんと、そして「あぶらむの里」の大郷博先生が手を振って待っていてくださいました。
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この飛騨古川駅や町並みは、映画「君の名は」の舞台だったそうです。

(聖地巡礼のサイト見つけました→こちら




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町の中の堀の中には鯉がいっぱい泳いでいました。








289938349_574179130819665_187776751995726728_n飛騨古川の落ち着いた町並みを歩くだけでも、心がす〜っと落ち着いていく感じがしました。
(人物が写っている写真はすべて画素数を落としています)



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そこから車で約10分、山間に入っていくと「あぶらむの里」がありました。




293712428_5312162522199308_7754999814154724047_nここは、今から35年前に立教大学のチャプレン(大学付牧師)だった大郷博さん夫妻が、仕事を辞して移住されたところ。





原野だったところを拓いてコツコツと手作りで作り上げてきた、自然豊かな場所です。広さは約2万坪もあるんですって!


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大郷先生は、若い時に沖縄ハンセン病療養所愛楽園の青木恵哉牧師に出会ったことで大きく生き方を変えられました。愛楽園でのボランティアを通して聖公会の牧師になる学びをし、そして立教大学のチャプレンになられます。









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 その間も、フィリピンやネパールなどを訪れ、常に弱い立場の人の傍らにいて、その想いを聞き、寄り添ってこられました。そして人々が自分の人生の旅の中で意味をみつけることができるようにと、「人生の良き旅人づくり」を目的とした「あぶらむの会」を立ち上げられたのです。




295509998_5343909265691300_6451672248322741631_nこの日は大郷博先生のお連れ合いの育さんが骨折されて入院されていたということで、食といのちの学び舎GAIAの強力な食のスタッフ、旅する料理人のタカさんとゆうゆうが、名古屋からの途中で食材をたくさん仕入れて、あぶらむの宿のキッチンをお借りして夕飯の準備をしていました。私もエプロン持参でお手伝いをしました。(私が出来るのは混ぜるとか、盛り付けるというくらいでしたが)



296023953_5343908612358032_6628708056470490985_n少しだけ涼しい風が吹いていたので、外のテラスで食事をしましょう〜ということになり、みんなで食事を運びました。




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このテラスも大郷先生の手作りなんですって!




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山の恵み、海の恵み(富山に意外と近くて、日本海側の海の幸も地元のスーパーにあったようです)、ほんとうに豊かな食事タイムになりました。








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途中からは部屋の中に移り、大郷先生のこれまでの経験、あぶらむの里の歩みなどをたくさん伺いました。



295999663_5343908759024684_5573916797973186025_n大郷先生は、徹底的に愛の人です。他者を簡単に批判することなく、寄り添ってその人の想いを聞き、その人が持っている良い所をみつけて、輝けるようにされる。しかも上から目線で教えられるのではなく、横に並んで座り、ユーモアを交えて、お話をしてくださる。それは大郷先生ご自身が、さまざまな挫折や失敗をしながらも、私たちが共にこの世にては旅人で神に生かされている存在なのだと確信を持っていらっしゃるからだと思いました。






お話を聞いていると、時間が経つのを忘れてしまうほどでした。

日付が変わる前に、それぞれお部屋に戻りましたが、なかなか寝付けず〜みんなも同じ気持ちで外へ出てみました。
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すると満天の星が!天の川に真夏の大三角形も!そして流れ星も!
(右の星の写真はphotoACのフリー素材です。さすがに私のスマホでは上手く撮れず・・・でもこんな風にはっきりと天の川と星々が見えていました)








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翌朝は、明け方目を覚ますころに降っていた雨・・・それも起き出すころには病んでいました。(泊まった部屋から昨夜のテラスが見えていました)






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朝6時過ぎには雨も上がり、みんなで散策に出かけました。


少し歩くと宇津江四十八滝自然公園があります。



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宇津江川の上流に向かって山道を登っていきます。

遊歩道が整備されていて歩きやすかったです。小鳥がさえずり、気持ちの良い散歩道でした。





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こんな感じの滝が、いくつもいくつも連なっていました。




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ぶなの「山おやじ」

樹齢、どれくらいなんだろう。何十年もこの森の中で水の流れと生きとし生けるものたちを見守ってきた樹々・・・





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そんな山や森が持っている命の力に触れることが出来る場だなあと思いました。







295039556_5343909195691307_733849302776295041_n宿に戻ってみんなで朝ごはんの準備をして、また豊かな朝食を囲むことができました。
ともに食卓を囲むということの大切さを大郷先生が一番にしてこられたんだなあと思いました。




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大郷先生は、「あぶらむの里」設立を機に身につけられた家具制作の技術で全国の教会に椅子を作って納め、それをこの里の運営の資金にされてきたそうです。






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ハンセン病患者さんの支援や子どもたちへの里山自然学校の運営、事情のある若者と一緒に暮らしての自立支援など、沢山の愛と優しさが溢れる活動を続けていらっしゃいます。そんな活動についてお話を聞いていると、時間が経つのを忘れます。


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気が付くと、もうお昼になっていて・・・お昼はタカさんがアワビ入りのカレーを作ってくれました!



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午後は、敷地内にある諸魂庵に案内してもらいました。




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ここは、なんと宝永元年八月吉日に建立されたという古民家を移築してこられたのだとか。大黒柱にしっかり墨でその文字を読むことが出来ました。








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ここはコンサートホールとしても使えるそうです。EMSiフェローにはプロのピアニストや歌手もいるので、ここでチャリティーコンサートが出来るといいねと、メンバーの中で夢が膨らんでいきます。



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諸魂庵にはこれまで大郷先生と出会って、大郷先生の生き方に影響を及ぼしてきた方、またともに語り合った方や、あぶらむの里の活動を支えてこられた方々のうち、天国へ籍を移した方々の名前が記してありました。



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この椅子が、大郷先生が設計、作られた教会椅子。

日本各地の教会に納められているのだそう・・・







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ここには特に大郷先生が沖縄のハンセン病愛楽園で出会われたおひとりおひとりの肖像が飾られていたりと、この世で一番弱い立場にあった方々に徹底的に寄り添ってこられたその想いが、伝わってくる場所でした。

しばし、レコードをかけていただいてのレコードコンサートに私たちも酔いしれました。





292035077_398672858743182_352286332434136189_n食といのちの学び舎GAIAで、この「あぶらむの里」の運営をも支援しつつ、私たちが目指すプロジェクトをこの地で出来るかどうか探る旅でしたが、何より私たちスタッフが大郷先生の人柄に触れ、勇気をもらい、前に進む力をいただきました。


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どんな形でそれが実現するか、まだ探っている段階ですが、まずは大郷先生と「あぶらむの里」に出会えたことに感謝しています。



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まずは、私自身も「あぶらむの会」に入会し、大郷先生とこの場所での活動を少しでも支援できればと思いました。

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そして食といのちの学び舎GAIAのプロジェクトで出会う子どもたちをこの自然豊かな里山に招待出来たらいいなあ〜という願いも具体的になってきました。




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ただ、私たちのスタンスは無理をせず、相手に寄り添うこと。そこが大郷先生と意見が合致します。支援を必要としている人をどのようなタイミングでお連れできるかは、とにかく神様の導きにお委ねするしかない。祈る気持ちで、「あぶらむの里」を後にしました。


東京に帰ってきて大郷先生の著書を読んで、もうすぐにあの場所へ戻りたくなっています。そんな場所なのです。またどこかで、そんな報告が出来ればいいなと願っています。

ちひろ美術館、そして教文館ナルニア国・齋藤惇夫さんの講演会へ

6月30日(木)


この日も35度を超えて猛暑日でした。幼稚園では熱中症アラートが朝から鳴りやまず、子どもたちは涼しい室内で過ごしました。


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そんな一日でしたが、仕事帰りに世田谷区上北沢から高井戸へ抜けて、そのまま環八を北上し、上井草へ・・・ちひろ美術館へ寄りました。









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ちひろ美術館では、6月25日から10月2日まで「ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展」と「ちひろ・花に映るもの」を開催中。









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「ちひろ美術館コレクション 江戸からいまへ 日本の絵本展」は、江戸時代の草双紙から始まって、明治時代の「コドモノクニ」などの絵雑誌に描かれた童画、戦後の絵本のへと約400年の間の絵本の変遷がわかる展示です。




江戸時代から現代までの間に、時代と共に印刷や本の形、絵画や文学、子どものとらえ方などさまざまな要素が絡み合って絵本が変化してきたことがわかり、とても見ごたえがありました。





ちひろ美術館から戻って、一休みしたあとは、銀座・教文館ナルニア国へと向かいました。

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この日の18時から、齋藤惇夫氏講演会「物語を読むよろこび」が開催されたのです。







昨年の9月に教文館から刊行された齋藤惇夫氏の子ども、本、祈りを記念しての講演会です。

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新型コロナの感染拡大で、講演会の開催がやっとこのタイミングになったとのこと。齋藤惇夫先生には、小樽・絵本児童文学研究センターの文化セミナーでお目にかかっていたのですが、それも2年中止になっているので、3年ぶりでした。(2019年11月の小樽・絵本児童文学研究センターの文化セミナーの様子→こちら






斎藤惇夫先生は、埼玉浦和にある聖公会の教会付属幼稚園の園長先生になって6年目だそうです。


幼稚園の園長先生になられたばかりの頃、広尾にある聖ミカエル教会での講座に参加し、園長になって子どもたちの反応を毎日見ることができるのが楽しいというお話を伺ったことがありました。(→こちら


園長先生になって6年目、でも毎日が新鮮な驚きが続いているとのこと。この日も背広姿で保育時間が終わる前に浦和を出てこられた斎藤先生に、子どもたちが「今日はお仕事なんだね」と声をかけたそうです。

普段はラフな格好で幼稚園にいるため、子どもたちには園長業務は仕事に映っていなかった?のですね。


『子ども、本、祈り』は3刷になり、講演会の依頼があちこちから舞い込むようになったそうです。「ものを書く」ということの結果と責任とおっしゃっていましたが、今、齋藤先生の話を聴きたいという方がそれだけ多いのだと思います。


今年はいろいろと節目の年なんだそうです。


斎藤先生の傑作児童文学『冒険者たち』(岩波書店→こちら)刊行50周年。
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浦和で続けていらっしゃる「絵本大学」という市民向け講座も20年目。












劇団四季のOBたちによって運営されている子どもミュージカル冒険者たち〜この海の彼方へも10年目。


斎藤先生は、河合隼雄先生が『子どもの宇宙』(岩波書店)の中で仰っていた「子どもの中の宇宙」について何度も取り上げながら、子ども時代に出合う本の大切さを話してくださいました。
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お話の中に出てきたタイトルを並べると・・・
『たのしい川べ』ケネス・グレーアム
『長い長いお医者さんの話』カレル・チャペック
『黒ねこのおきゃくさま』ルース・エインズワース
『セロひきのゴーシュ』宮沢賢治
『雪わたり』宮沢賢治
『鹿おどりのはじまり』宮沢賢治
『裸の王様』アンデルセン
『ヘンゼルとグレーテル』グリム
『漁師とおかみさん』グリム
『ふしぎなオルガン』リヒャルト・レアンダー
『ねずみ女房』ルーマ・ゴッテン
『ホビットの冒険』トールキン
『ピーター・ラビット』ビアトリクス・ポター
『少年動物誌』河合雅雄
『子どもと自然』河合雅雄
『ドエクル探検隊』草山万兎(河合雅雄)

斎藤惇夫さんが、優れた作家だと思っているお二人として挙げられたのが、河合雅雄先生と宮沢賢治。

河合雅雄先生は動物学者としてフィールドワークを徹底してされた方。その河合雅雄先生が著書『宮沢賢治の心を読む』(童話屋 2011)の中で宮沢賢治の「動物と語り合えるすごさ」に触れて感嘆されていたというのです。

宮沢賢治は動物のことばを聞いていたに違いない、自然に対し、科学者の目で見て、書き尽くしていたと、そんなことを「母の友」での対談で河合雅雄先生と話したことを語ってくださいました。
(「母の友」2015年8月号→こちら
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この雑誌、うちにありました〜再読!
「対談 自然、子ども、物語」河合雅雄/斎藤惇夫



バックナンバーを読める方はぜひ!手に取ってみてください。




(一部引用すると・・・)「母の友」2015年8月号p60〜61
斎藤 (前略)賢治の動物のとらえ方がすごいなと思うのが、特に「注文の多い料理店」です。子どもの頃に読んで、人間が動物に食われそうになるというので怖かったのですが、あるとき、あの山猫たちは素敵な神様で、人間に大切なことを見事に示しているんだと気づいたんです。つまり、動物を深く敬愛している賢治が、それゆえに動物の側に身を置き、人間に対して物を語っている。それは河合先生の作品を読んでもそうで、動物を敬愛しているという意味で、宮沢賢治と同じだと思っています。
河合 いやあ、ぼくも動物が好きで、動物って何だろうというのを、動物学というサイエンスでやってきて、そこからどうしても抜けおちるものを動物記という物語の形で書いてきました。動物記の最後で、キョクアジサシという北極と南極を行き来する渡り鳥の話を書いたのですが、これがまあ、たいへんでした。南極から北極まで、一回も降りずに飛び続けるのですが、それをどう書くかって言ったらねえ・・・・。子どもとお父さんの会話になんかしたら書きやすかったと思うんですよ。子どもに「お父さんはもうだめだ」とか言ったりね。
斎藤 ぼくならそうやっちゃうな(笑)。
河合 でも、動物はしゃべりませんから、それはできない。もう青い青い、真っ青な空を飛んでいくばかりです。だから、今度は、やっぱり動物にしゃべらせてみたいなあと思って、今、動物がしゃべるお話を書いています。





最後に取り上げられた『ドエクル探検隊』(2018)が、まさにその作品なんですね。これについては、福音館書店の「あのね」でも取り上げられています。(→こちら
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少年時代に憧れていたものを通して、人間が生きるということはどういうことなのか、ファンタジー形式で解き明かした河合雅雄先生の集大成。

子どもの心の宇宙を、作品の中で昇華させた最高傑作とは斎藤先生の弁。







河合雅雄先生が、80年代から書き始めて90才を超えて書き上げたこの作品を、私も子どもたちにきちんと手渡したいなと思いました。


この日は嬉しいご対面もありました。名古屋の図書館にお勤めの大橋さんにやっとリアルで会えたのです。大橋さんは、何度かあちこちでご一緒している元偕成社の藤坂さんが館長をしている図書館で頼れる児童担当。オンラインわらべうたの会にも参加してくださっていて、画面越しには会ったことがあるのですが、リアルでは初めて。

日本図書館協会の児童図書館員講座に参加のため上京されていて、この講演会にも参加すると伺っていて、対面を楽しみにしていました。入場順に座ったらなんと!お隣同士でした。


静岡から参加された濱野さんと勝山さん、そして赤羽茂乃さんとも久しぶりの再会。

サイン会終了後、4人で東京駅で軽く夕飯をいただいて、静岡組を新幹線口に見送ったあとは、茂乃さんと22時過ぎまでお茶をしながら、久しぶりに積もる話もすることができました。


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